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【思い出し読書感想文】『勝手にふるえてろ』綿矢りさ

この前私より歳が1つ上の人間の家にあがったら、ちゃんとした本棚があって、作家順に並んでて、なんだか恥ずかしくなった。伊坂幸太郎が多くて、でも陽気なギャングの3巻目は無くて、昔平積みされていた本があって、でもこれ確か続編でてたよな、これは私が引っ越すとき売ったやつだな、そこのは私は読んでなかったけど流行っていたな、、。つまりは私の中学時代、出版されていた本が主にあった。本棚は趣味が剥き出しになっているようで嫌だ。家の本はほぼ押入れにしまってあるから、昔読んだ本とは普段全然顔を合わせない。のだが、この人間の本棚は読んだことある本が多くて、中学時代読んだ本たちをちょろちょろ思い出した。

勝手にふるえてろ』は読んだ当初めちゃくちゃに嫌悪感しか抱かなかった。胸糞が最高に悪かった。それなのに本屋に行くと平積みされまくり、事あるごとにキャンペーンに加えられているので、友人と本屋に行った際、本を指差して「この本面白くないよ」と言ったりしていた。今思うと結構酷いことしてるけど、それくらい、軽蔑に近いくらい私は受け入れられなかった。

この本の内容、私もうろ覚えなので一度思い出したい。とてもネタバレしまくるのと、記憶が定かでないのとで、この本を読んだことない人がこのブログ読むのはちょっとよろしくないかもしれない。気をつけて!

主人公は処女を拗らせた女だ。他人が鳴らす音姫に紛れて用をたすのが快感(当時ここはちょっと気持ちがわかったので覚えてる)な捻くれた女。昔の同級生の王子みたいなやつがまだ気になっている。王子は大人しくて、色素が薄い。主人公は学生時代、教室で漫画を描いていて、王子にそれを見せるのが好きだった。王子への恋心ともつかない気持ちを抱えつつ、でも少し期待しつつ同級生の集まりに行くと王子がいた。再会したけど、主人公は王子が好きだったのか?なんかよくわからなくなる。そんな中、主人公に言いよる男が現れる。髪をワックスで固めツンツンさせた、油汗ぎとぎとのむさい、スキンシップきつい男だ。主人公はなんかやけくそになってそこら辺で処女捨てたろかと思うけど、そんな勇気もなくて、処女なんて傘の持ち手のビニール袋みたいなもんだよなとか言う。剥がそうとすれば上手く行かないけど、いつのまにか剥がれている。(ここはなんかよく覚えてる)2人の男の間で揺れ、ごちゃごちゃ考える。王子を追っていきたいような、迫ってくれる目の前の男を選びたいような、とても迷う。ワックス男が主人公にめちゃアタックし、外に向かってセックスしよーぜーと叫び、主人公はワックス男を選ぶことを決める。王子なんて、勝手にふるえてろと捨て台詞を吐く主人公。

おしまいです。

王子が気になるならもっと王子をちゃんと追っていけよなぁ、なーに迫られたくらいで乗り換えてるのだ、そんなんで未練切れるんだったら、はじめから王子王子言うのおかしいから。と読んだ当時は思った。王子を諦めないで欲しかった。王子を諦めたら、私が見捨てられると思った。私はその頃ずっと気になっている人間がいたから、先に進もうとする主人公に置いていかれる感じがした。のでした。一途こそ素敵なことだと思っていた私にとって、主人公の選択は裏切りに近いものがあった。

だが今の私は、多分今初見でこれを読めたとしたら、全然違うことを思うんじゃないかな。この物語は、王子様願望を捨てる物語だ。読んだのだいぶ前で偉そうなこと言ってますけど。過去にすがるのとか、幻想を大切に育てるのとか、ぜんぶやめにする。思い出はどんどん美化されていくものだから過ごしやすい。生ぬるい温室だ。そこから主人公は出たのだ。

ということを、この本を読んでから7年くらい経ってから思いました。夢見がちな少女漫画的希望を捨てるの、少女革命ウテナを思い出すな。ウテナを見たからこの本のこともっと考えられたというのもある気がするけど。

これもだけど、嫌いな本ほどよく内容を覚えているな。綿矢作品、怖いけど、なにかまた読んでみようかなと思いました。